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鉄格子の中の76日間、背景に牧師らの組織的ネットワーク

第2回ICRF懇談会 強制改宗の壮絶な実態を報告

ICRFは7月25日、「家庭連合信者に対する拉致監禁強制改宗の被害実態」を主題とする第2回ICRF懇談会を開催した。ICRF役員の他、宗教者、有識者ら21人が参加。

「拉致監禁被害者の会」の吉村正氏が「救済観の差違による『信仰抹殺』は是か非か~拉致監禁の被害者として語る実態と信仰の尊厳~」のタイトルで講演した。吉村氏の講演内容の要旨は次の通り。

吉村氏は1979年に京都大学に入学後、2年生の時に原理研究会に所属し活動する中、神のことを考えるようになり、価値観が変わった。広島に住む母親は正氏の人生の変化に不安を覚え、相談したクリスチャンから和賀真也牧師を紹介されたことで、反統一運動に巻き込まれることになった。統一運動を巡る当時の状況は、福音派を中心としたキリスト教の反対、日本基督教団を中心とした原理対策協議会の結成など、宗教法人世界基督教統一神霊協会の信仰に対する攻撃、共産党系支援団体、赤旗などによる政治団体国際勝共連合に対するスパイ防止法制定運動への批判、さらに、朝日ジャーナルなどマスコミによる統一運動全般をひとまとめにした批判が展開されはじめた頃であった。

拉致監禁の実態は、暴力団のような男5人に取り囲まれ、手錠をかけられ、チャーター機で北海道へ移送され、鉄格子付きアパートで76日間監禁された。その間、人格、信仰が否定され、外部との通信は制限されていた。この間に、教団側から人身保護請求が札幌地裁に出されたが、1週間で開くべき審問が1か月以上引き延ばされ、司法の対応も宗教に対してよい印象を持っていないようだった。相手側は200人の弁護団を結成し、拘束の事実を認めたうえで悪辣な団体からの緊急避難を主張、その背後では、原理対策協議会などの宗教者全国的ネットワークが形成され、説得側の組織的連携が進んでいた。これに対する教会側の弁護士は初めはただ1人。後に7人に増強された。

第1回審問で本人が監禁されている事実を主張するも解放されず、2回目はさらに1月後の予定。いらだちを覚え絶望感を味わった。しかし、その時、説得牧師が置いていったみ言「全体蕩減」を読んで、光のエネルギーのような神秘体験を与えられ、重生復活を体験した。自分の力ではどうすることもできない限界状態の中で、イエスの十字架の原理的背景が脳裏によみがえり、生きて十字架の道を越えていく文総裁の生涯がよみがえり、自らもその道を行こうと決意した。

自らの決意がみなぎってくると、相手側の利権で結びついていた鋼のごとき結束力がほころび始めた。マスコミの目を恐れて、鉄格子をはずし、監視付ではあるが散歩もできるようになった。その一瞬のすきをみて脱出に成功した。人身保護請求を巡る審問は本人不在のまま終了し、改めて「統一教会=原理運動=勝共連合の暗躍を憂慮する会」会長の戸田実津男氏を逮捕監禁罪で刑事告訴した。

1年後、彼は検察官の前で謝罪文を書き、検察の裁量により起訴猶予処分となった。戸田アパートなどの監禁活動は壊滅的な打撃を受け解散されたが、反対派の宗教者たちは、場所を札幌クリスチャンセンターなどに変えて継続。今日に至るまで「反省なき再生産」が続いている。宮谷泉牧師、泉パウロ牧師などは、自ら「救出活動の証」と称してSNSに動画をアップしており、犯罪行為であるとの自覚は見られない。こうした拉致監禁を裏で操作しながら、親、親族、教会信者らを実行部隊にしたてて強制棄教を神のみ旨と信じて継続してきた牧師たちは、全国に150人~200人いることが確認されている。

1987年に起こった吉村氏の事件以降も、宮村峻・有田芳生・原理対策協議会らによる拉致監禁活動は継続し、脱会した元信者らによる青春を返せ訴訟裁判が頻発、マスコミと連動して拉致監禁活動が正義化されていった。その延長上に「法人解散命令請求」がある。

拉致監禁強制棄教を推進、あるいは擁護してきたキリスト教指導者、キリスト教徒に対して、今一度問いかけたいのは、「魂の救済」の名の下に他人の信仰を破壊することが許されるのか、ということだ。赦しと悔い改めの関係性を取り戻したいと願っているし、対話と反省を促す人々と協働していきたい、と語った。

吉村氏は自らの使命として、「反カルト運動が行きすぎて宗教弾圧に近く、強制改宗が黙認されてきた風潮に対して、バランスのとれた議論の場を提供すること。見えづらくされてきた人権侵害を社会の光の下にさらし、声を奪われた人々に代弁の場を提供すること」として、「多くの宗教者に『あの時』声を上げられなかったなら、今こそ声を上げてほしい」と願い、感謝の言葉で締めくくった。

講演の質疑応答時間には、参加者の発言から、拉致監禁強制改宗の実態の精査と分析に新たな視点を提示するものや、「宗教法人」の解散命令に対する意見、提言も多数あった。

例えば、「当時、刑事告発した件を勝訴していれば、その後の歴史も変わっていたのではないか」との質問に対して、「検察は親も含めて刑事告訴しなければ公判の維持は難しいと考えたようで、その当時に教団、被害者も親まで訴えることには抵抗があった」と答えた。「未だに無自覚に拉致監禁を行っている牧師の無神経さに、クリスチャンとして胸が痛い」、「法治国家でこういう事件が長く続いたこと自体が不思議だ」、「欧米では凄絶な宗教裁判や宗教弾圧の経験を経て、信教の自由を保障する法やシステムが構築されてきた。日本はこの点がまだ無感覚。日本が代わる時だと思う」といった感想が出た。また、ある宗教学者は「個人的に非常に憤りを感ずるが、宗教学者としては、多様な人脈が複雑に絡み合った『ディプログラミング・ネットワーク』を解明しいくことが当面の使命だと思っている」との意欲を見せた。

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